森岡督行

2012年8月20日

写真集についての本『写真集 誰かに贈りたくなる108冊』を2011年に出したところ、
さいわいにも、たくさんの方に手に取ってもらえることとなりました。
このところ書籍や写真集は低調だとよく言われるんですが、
ささやかながら応援歌のようなものになればいいと思っていたのでよかった。

茅場町でやっている古書店では写真集もよく扱っています。
セールストークというほどでもないんですが、お客さんにはいろいろと本のことをお話します。
その語り口を知っている編集者が、それを文字にしたら本になると言ってくれて、つくりはじめたんですけどね。

写真集って、つい語りたくなるおもしろさがたっぷり含まれているものだと思います。
佇まいからして一冊ずついろいろ言いたくなるし、
それに何より、つくり手の物語がまとまった形で見られるのがいい。
幾枚もの写真の束と装丁などを通して、何かを伝えようとしてくれているのが、
じっくり向き合うとよくわかります。
まれには何も伝えないようにといっしょうけんめいになっている本なんかもあったりして、
それはそれでなるほどと思ったりしますね。

仕事柄もあって、人から本をいただく機会はけっこうあるんです。
もちろん目を通してからお礼の連絡をするのですが、正直なところそれはけっこうたいへんなことだったりします。
内容が自分の興味の範囲でないこともあるし、そういうときは申し訳ない気分です。

その点、写真集は人に贈るうえで、押しつけがましさがないですね。
とにかくひと通り中身を見ようと思えば、時間をかけずすぐにパラパラと見ることができる。
何かを感じ取ることができればうれしいことだし、そうでなければ
「自分にはちょっと合わなかった」と思うだけでいい。
すばやくコミュニケーションがとれるわけですね。
気に入れば何度でも、いくらでもじっくり楽しめばいいわけで、ギフトとしての使い勝手は抜群です。

個人的な感触としては、写真集を贈ると、その人との距離がぐっと近くなる気がします。
不思議ですね。どんな写真集を選んだらいいかは、だれもが悩むところでしょう。
手っ取り早いのは、写真集を専門に置いている書店に行って事情を話し、いっしょに探してもらうこと。
店の人もけっこう迷ってしまうかもしれないけれど、何か思いがけない答えが出てきそうです。

その人がふだんしていることに関係しそうな本を選ぶと、喜ばれることは多いかもしれません。
たとえば洋服のデザインを勉強している人に贈るのだったら、
ラルティーグやサラ・ムーン、ドアノーなんかはどうでしょう。
いい資料になると思うんですよ。
フラワーアレンジメントなど花の仕事をしていたり関心のある人だったら、
アーヴィング・ペンの『フラワーズ』とか。
花はローアングルから見てもきれいだってことは、こういう写真集でも見ないとなかなか気づけないものです。

あとは、贈る相手に合わせるのではなく、純粋に自分の好きな写真集をあげてしまうのも手です。
どんな反応が返ってくるかわかりませんが、ふたりの関係性がきっと新しくなる。
贈られた側は、「なぜこの本なんだろう」といろいろ考えてくれそうですよね。
相手に自分のことを考えてもらうための、いいきっかけになりますよ(笑)。


もりおか・よしゆき
1974年、山形県生まれ。古書店店主。
東京・茅場町にて写真集や美術書を中心とした古書店「森岡書店」を営む。
’11年、『写真集 誰かに贈りたくなる108冊』(平凡社)刊行。
http://moriokashoten.com/

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